OEMとは?各業界の特徴やODMとの違いを徹底解説

投稿日:2022/3/31

OEMとは製造工程を外注する契約方法の1つで、製造業の経営戦略において重要な概念です。「Original Equipment Manufacturing」の略で、日本語では「相手先ブランド製造」などと訳されます。近年OEMの市場は拡大しており、業界によってはOEMを専門にするメーカーもいるほどです。本記事では以下のご要望をお持ちの方を対象にOEMについて詳しく解説します。

  • OEMの概要や背景など基本的な理解がしたい
  • 様々な業界におけるOEMについて知りたい
  • OEMと混同しやすい様々な用語・概念との違いを説明できるようになりたい

1. OEMとは

OEMとは、他企業に自社ブランドの製品の製造を依頼するアウトソーシングの一種です。

OEMは基本的には調達や生産の部分を委託するものですが、場合によっては企画から生産まで一貫して請負側が担う場合もあります。詳しくは各業界ごとの章でご説明いたします。

1.1. OEMの目的

OEMの目的は自社の強みと他社の強みを組み合わせて自社だけではなし得ないことを実現することです。具体的には以下の状況が想定されます。

【依頼側】

  • 創業間もない企業が、革新的なアイディアを製品化して市場に新規参入する
  • 小売店がPBを確立してファン層を醸成する

【受託側】

  • 技術力はあるのに無名な企業が、他社ブランドを活用して実利を得る
  • 円熟期にある企業が、ローリスクで新たな業種に参入する

例えば最近EV車の販売で大きな成長をしているテスラモーターズは最初、電気のマネジメントシステムにおける優れたアイディアを持っていましたが、車自体のフレームを作ったり十分な大きさの充電池を開発したりする知見は持っていませんでした。そのためパナソニック製のリチウムイオン電池を使ったり、実際の製造はロータス社にOEMするなどして実車の販売にこぎつけました。もしテスラが自社での製造にこだわっていたら、市場への参入が遅れてEV車のシェアは他の企業が独占していたかもしれません。

このように、OEMによって自社が優位性を持っている領域に特化し、逆に苦手としている工程や導入に時間がかかる部分を他社に任せることができます。

1.2. OEMによるブランド力と技術力の融合

従来の下請けでは部品や素材といった製品全体の一部を発注し、自社工場で組み立てする流れが一般的でした。しかしOEMにおいては自社と同程度かそれ以上の技術力を持つ企業に委託することで製造そのものをアウトソースします。中でもOEMのポイントは、ブランド力のある企業と技術力のある企業が結びついている点です。

有名なブランドになっている企業は以下の強みを有しています。

  • 先進的な企画力や開発力を持っている
  • 優れたマーケティング力があり顧客のニーズがわかる
  • 国際的な販売網を持っている
  • ブランドに高いロイヤルティを持つファンがいる

一方でOEMを受託する側の企業は以下のような強みのどれかを持っています。

  • 様々な設計に対応できる技術力がある
  • 精密な生産ができる
  • ハイクオリティな製品を低コストで届けられる
  • 自社製品がある

この2つが結びつくことで、確かな技術がある町工場が世界中に自社の製品を届けたり、新製品の製造ラインをゼロから構築する手間と時間とコストを削減できたりするのです。

1.3. OEMの注意点

OEMはうまくいくとお互いの強みを活かしあい、弱みをカバーしあう理想的な関係性を築くことができますが、十分な生産能力がある企業と契約できなかったり、他企業とOEM先の奪い合いになったりするなどリスクも存在しています。

委託する側の注意点

OEMには委託先を決める上でいくつかの注意点が存在します。

【委託先を決める際の注意点】

コピー品が出回ると、実際に性能に差がない分自社の製品の販売に大ダメージを被ります。いくつか外注先を分けたり、厳しいルールのある契約をしたりする必要があります。また、優れた技術を持っている企業には発注が集中するため、早目に工場を確保するようにしましょう。

  • 特に海外のメーカーに委託する場合、商標の流出やコピー品が出回る可能性がある
  • OEM先の製造ラインを早めに確保しておく
  • 委託先の技術力が自社の求める水準を満たしているか確認する

【委託後の注意点】

自社で生産を完結できない分、以下に示したデメリットや注意点があります。特に、OEM先が競合になったり倒産したりして委託できなくなると最悪の場合、自社製品の製造ができない場合や品質が落ちたものを販売しなくてはならない場合があります。

  • 技術供与した会社が後々自社の競合となる可能性がある
  • 自社の製造技術が育たない
  • 製造面での収益が得られない

受託する側の注意点

受託側は、常に依頼が舞い込み、工場がフル稼働している状態が理想です。そのためには高い技術力を維持し、なおかつその技術の将来性を見極めていく必要があります。

  • 自社の技術的な強みを理解して、高品質を維持する
  • 1つの企業の契約にばかり依存しすぎない
  • 企画力や開発力を向上して自社ブランドのシェア向上や、より広範囲な契約を得られるように努める

2. 各業界におけるOEM

第1章でも軽く触れましたが、各業界ごとにOEMの形態は多少異なります。今回は特にOEMの業態が特徴的な3つの業界を取り上げましたが、他の業界の事例については第4章で簡単に触れているので是非最後までお読みください。

2.1. 自動車業界におけるOEM

自動車業界では、全く外見も内装も同じ車を2つのブランドが異なる商品名で販売しています。

例えばトヨタはダイハツに委託してOEM車の生産を行っています。特に2020年度上半期、全ての車種の中で1番売れたトヨタのライズ(ダイハツ名:ロッキー)は、OEM車の成功例です。ダイハツの企画力とトヨタの販売網が嚙み合った結果の躍進だと言えます。両社の協力関係は、2006年のパッソ(ダイハツ名:ブーン)までさかのぼることができます。

自動車業界の特徴は、OEMが水平的で両社とも同じ製品を売っている点です。一見すると受託側が独占的に売った方が高い収益を得られそうですが、各ブランドの固定ファン層が多いのでこのような状態になっています。

トヨタ公式サイトより

2.2. アパレル業界におけるOEM

アパレル業界においてはデザイン・流通・販売に特化したハイブランドが数多く存在し、世界各地の高い技術を有する工場でOEM生産が行われています。

日本でも東京都足立区のミウラはコムデギャルソンなどのハイブランドに向けて靴をOEM生産しています。また、その高い技術力からPADRONEというオーダーメイドシューズの自社ブランドも持っており、人気を博しています。

PADRONE公式サイトより

2.3. 半導体業界におけるOEM

半導体業界では、製造の専門家であるファウンドリと呼ばれる業態が存在するなどOEMが当たり前となっています。一方で他の業界と異なり、ファウンドリの側でも設計に関して深く理解する必要があり、とりわけナノレベルの加工技術を持つ企業は少ないため完全に力関係が逆転しています。

※ファウンドリとは、半導体産業において実際に半導体デバイスを生産する工場や企業を指します。

台湾に本社があるTSMCは5nmの半導体を安定的に製造できる唯一の企業であり、最先端の半導体を求めている企業からの注文が殺到しています。米中貿易摩擦においてもTSMCから中国のHuaweiへの供給がストップして大きなニュースになるなど、高い技術力から国際的に動向が注目されるOEM企業です。

3. OEMと混同しやすい概念

3.1. OEMとアウトソーシングの違い

アウトソーシングとは、あくまで業務の一部を外部の会社に依頼することであり、製造工程そのものを委託するOEMとは大きく異なります。また、その対象となる領域は生産に限りません。例えば人事や財務などもアウトソーシングの対象となることがあります。

【OEM】

  • 調達や生産といった製造工程のみの外注である
  • 製造工程全体を委託する

【アウトソーシング】

  • 製造業務に限らない
  • 業務全体を委託する場合と一部を委託する場合がある

3.2. OEMとODM、EMSの違い

ODMとは、Original Design Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を設計・生産することをいいます。 基本的にOEMが製造工程を委託される契約で、業界によっては企画や研究開発・設計の一部をクライアントと協力して行うのに対し、ODMは「クライアントのブランドの商品である」という前提があるだけで、企画からマーケティング、販売まで契約によってかなり幅広い領域をカバーします。

数年前の日本のスマートフォン生産ではODMが主流で、NTTドコモがSONYやFujitsuに製造を依頼していました。ドコモは流通や販売とドコモのブランド名のみを担当し、実際の製品の設計やデザインなどについては各メーカーに任せていました。今では海外メーカーのスマホが普及して国内メーカーの多くがスマホ事業から撤退し、通信事業者ブランド自体のスマホはあまり見なくなりました。

EMSとは、Electronics Manufacturing Servicesを略したものです。電子機器の製造を受託するサービスを指し、OEMよりODMに近い概念になっています。ODMとの違いとしては電子製品に限定されている点と、受託側がクライアントと各工程について相談しない点にあります。より生産者の側に多くの権限が与えられている一方で、委託側は品質のコントロールなどしづらいため、注意が必要です。

3.3. OEMとPB

コンビニエンスストアのお惣菜やAmazonの電池といったPB(プライベートブランド)商品も、OEMによって生産されています。PBは小売店のブランド名で販売されている商品で、メーカーのブランド名で小売店が販売している飲料や電化製品などのNB(ナショナルブランド)商品と対になる概念です。

3.4. OEMとファブレス企業

ファブレス企業とは、自社で行う領域を開発や設計・デザインに特化し、生産工程は外部委託する企業のことを指します。もともとは自社で生産工程まで担っていたメーカーがリスクやコストの引き下げを狙ってファブレス企業になることが多く、こうした経営体制をファブレス経営と呼びます。

有名な企業では任天堂が挙げられます。コロナ禍のステイホーム需要から1億台以上売れたNintendo Switchも、外部の生産パートナーに製品生産に関わる業務を委託しており、任天堂は企画・設計とマーケティングや販売だけを自社で行いました。

ニンテンドー公式サイトより

4. まとめ

OEMは生産工程の管理コストや、働き手が確保できないリスクに悩んでいる企業にとってはかなり有効な解決策です。また、OEMを受注する側からしても、工場の余剰生産能力をフル活用できるためお互いに高いメリットがあると言えます。

弊社では組み立てから検品まで製造工程において豊富な実績を有しており、OEMや部品サプライヤーの企業様から多数の発注をいただいております。また、セル生産方式で短期間での生産ライン構築も得意としており、最短でご依頼日の翌日からでも着手することが可能です。

もしご依頼を検討されている方は、是非一度お問い合わせフォームからご相談ください。

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